間に合った

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 一つの店がおさまったら、また、別の店だ。  万引きがなくなる日というのは来ないのだろう。  ただ、あまり発生しない店というのはある。だから、少し気を抜いていた時だった。  女の子が笑いながら入ってきた。柴ちゃんだ。しかも同じくらいの男の子と手をつないでいる。  嬉しくなって、私は思わず、男の子の顔を見た。それから、慌てて見つからない場所に移動した。私がいることに気づいたら、気まずいだろう。  手を離した男の子は惣菜売り場に向かった。まったく、男の子というものはスーパーで他に買うものはないのだろうか。  柴ちゃんはチョコレートのコーナーに行った。チョコレートが本当に好きなのかもしれない。他のお菓子を見ずに熱心にチョコレートを見ている。  ちょっと、待って!  その緊張感はまさか。  私は慌てて、柴ちゃんに近づく。もう、見つかっても構わない。  私が手首を掴んだのは、柴ちゃんがバッグにチョコレートを放り込んだ後だった。  私の顔を見て、柴ちゃんはすぐに気づいたようだった。おとなしく、うつむいた。 「一名確保」  インカムで連絡して、ほっと息をつく。  少なくともこれで柴ちゃんのまわりが染まるのを防ぐことができた。間に合ったよね。  不安に思いながら、やってきたガードマンに柴ちゃんを引き渡す。  いつのまにか、コロッケを手に戻ってきた子が呆然とその様子を見ている。  私は微笑みかけた。  我に返った子の声が震えている。 「何で? 母さんが」
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