帰りのバスで

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帰りのバスで

 遅くなっちゃったな…  橘咲耶(たちばなさや)は不動産勤務の二年目だ。準総合職で採用され、結構忙しかった。  帰宅に向かうバスに乗り込んだが、思ったより遅い時間のバスになってしまった。  咲耶は心底疲れていた。  今日は火曜日だった。本当は休みだった。不動産勤務は火曜日、水曜日休みになる。しかし火曜日は休めない時も多かった。  咲耶の住むマンションはバスで30分掛かる。  運良く途中のバス停から座ることができた。座ると途端に眠気に襲われた。  早く着かないかな…  いつの間にかうとうとしてしまった。  肩を叩かれた。 「えっ」  ハッとなって咲耶は目を開けた。  見ると一人の男性が咲耶の側に立っていた。 「バス、終点に着きましたよ」 「え?う、嘘…」  私、寝過ごしちゃったんだ。 「取り敢えず降りないと」 「そ、そうですね」  咲耶は声を掛けてくれた人と一緒にバスを降りた。  乗客は咲耶とその男性しかいなかった。 「…もっと前で降りるんだったの?」  その男性は咲耶に話し掛けた。 「あ、はい…三つ前の停留所で。完全に寝過ごしちゃいました」 「…家に帰れるの?」 「スマホを見れば何とか…」 「…僕、良かったらそのバス停まで一緒に行こうか?」 「え?」  思わず咲耶はその男性を見てしまった。
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