再会

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再会

 木曜日の朝。咲耶はバスに乗り込んだ。朝は混んでいてまず座れない。  乗り込んだすぐ側のところで立っていることにした。  すると後ろから肩を叩かれた。  振り向くと駿汰だった。 「おはよう」  駿汰は少し笑顔で言った。 「おはようございます…」  咲耶は驚いて返事をした。 「一昨日は無事に家に着けた?」 「うん、ありがとう。お陰様で大丈夫だったよ」 「それは良かった」 「吉岡君、このバスなの?」 「うーんまちまちかな。もう一本早い時もあるよ」 「そっか。今までも一緒の時があったんだね」  咲耶は混んでいるバスだからか、これまでは駿汰のことには気付かなかった。 「…そうだね。橘さんはどこで降りるの?」 「終点なの」 「そうか。僕は二つ前で降りるかな」 「役所勤務だったよね」 「うん。橘さんは不動産勤務だよね。昨日は休めたの?」 「まあ…でも、一日しか休みがないからあっという間で」 「社会人になると休みは心底ありがたいよな」 「そうだね」  咲耶はその後も駿汰と話しながらバスに乗っていた。 「じゃ、僕、降りるから」 「うん、一日頑張ろうね」  咲耶が言うと駿汰は微笑んで降りて行った。  やっぱり吉岡君って話しやすいな。こんな偶然あるのね。  いつもよりいい気分で咲耶も終点でバスを降りたのだった。
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