夢の日々を生きる者

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「ゲームをしましょう」  夢を見ていた。 「私の事を見つけられたら勝ちです」  いつもの夢だ。 「私は貴方の大切な人になけます」  何度も何度も同じ夢を見ている。だから先の台詞も、展開も、何もかも分かる。時々はそうでない時もあったけれどそれは子供のころの話。まだ夢を見る回数の少なかったころの話だ。 「私の事を見つけたら」  だから今回もいつもと同じように彼女は言った。 「私の事を殺してください」  夢の中の彼女は説明する。ゲームの中の世界はとても平和な世界だから、人殺しは犯罪だという。見つかれば一生を棒に振ってしまうだろう。  そのリスクを超えて彼女を殺さなくてはゲームは最初からやり返しになる。また違ったシチュエーションでゲームは繰り返され彼女を殺すまで終わらない。 「この夢を見たらゲーム開始です」  夢の中の少女は白い髪の少女だった。この世の者とは思えないくらい綺麗で、どこか寂し気だった。けれどその瞳には決意の色と挑むような意思が宿っていた。 「私の事を見つけてください」  その容姿のままなら彼女を見つけるのは容易いだろう。でもゲーム内では容姿が変わるという。性格も変わる。自分は自分ということを忘れるし、彼女も彼女ということを忘れる。全く別の人間になる。もしかしたら性別すら変わるかもしれない。 「私を殺したらゲームはクリアです」  勿論、間違った人間を殺してもゲームは終わらない。彼女を探して、見つけて、そして殺さなくてはならない。 「そしてもしこのゲームを楽しいと感じてくれたなら、その時は」  少女は懇願するように俺を見つめる。 「私の弟を神様にしてください」  ・・・  目を覚ますとピアノの音が緩やかに部屋の中を満たしていた。  隣の部屋で兄さんが弾いているのだろう。彼女の夢を見るときはいつもそうだ。録音された音楽ではなく兄さんがピアノを弾いている。癪なことに兄さんには才能がある。兄さんのピアノを弾いていると無意識に精神に影響がありあんな妙な夢を見るのだと俺は考えている。  夢の中の登場人物は主に3人。あの美しい女性と神様であるらしい俺自身。そして彼女の弟のピアニスト。あの世界の人間は皆神様になることを目指していているらしい。夢の中では詳細に設定を覚えているのだが目を覚ますと次第にそれはそれは忘れていく。  3年前、夢の中の女性はゲームの中で自分を殺してほしいと言ってきた。ゲームの中は犯罪は許されない平和な世界だという。彼女の言うゲームとはどうやらこの現実の世界のことらしい。俺が人を殺せば当然警察に捕まる。殺しすぎれば死刑になる。そのリスクを背負って彼女を殺すことができればゲームはクリアなのだという。  兄さんがピアノを弾いている時、彼女の夢を見る。ということは夢の中の彼女は兄さんなのだろうか? 彼女は性別も変わるかもしれないと言っていた。ありえない話ではない。ならば、俺は兄さんを殺さなくてはならないのだろうか?  ぼんやりとした頭で考えるが勿論そんなことは馬鹿げたことだ。あるわけがない。夢の中で美しい女に私を殺すように言われたからと言って性別すら違う兄を殺すなど。そんなことをして警察に捕まってどう釈明すると言うのか? 精神疾患を疑われることは勿論、潜在的な性同一性障害すら疑われかねない。美しいと思っている女を兄さんだと思っているのだからそのように疑われかねない。  次第に頭が覚醒するにつれ、その馬鹿げた考えを一笑にふす。  まだ眠気が覚めぬ頭で部屋を出ようとして思いとどまる。  リビングには義姉さんがいる。寝ぼけた顔ででていくわけにはいかない。しっかり身支度を整えてから部屋を出ることにする。  俺は身支度を整え部屋のドアを開ける。隣の兄さんの部屋の前には盆に盛られた朝食が置かれていた。まだ作ったばかりなのだろう温かな湯気が登っていた。  俺は一瞬眉を顰めるとリビングへと向かった。  ・・・ 「佑香さんはなんで兄さんと結婚したんですか?」 「どうしたの急に」 「いや、なんとなく」  なんで聞いたのかと言われたら、たぶん夢のせいで夢を見たのは兄のピアノのせいだから兄のせいだろう。この話を聞くのは一体何度目になるのだろう? あの夢を見た日はいつもこうだった。  パブロフの犬のように同じ動作を繰り返してしまうのだ。 「だって久万くんはすごいんだから」  案の定、兄さんとのなり染めを楽しそうに話す義姉さん。  兄さんは昔からピアノがうまくてコンクールではいつも賞を取っていた。神童としてみなから期待されていた。平凡な俺とは大違いだった。  そんな神童の兄さんは義姉さんから見たら王子様に見えたみたいで小さなころから兄さんのことを好いていた。  兄さんも義姉さんのことを憎からず思っていたみたいで、義姉さんのために曲をつくったりして、特別扱いしていた。  いつしか二人は将来を誓いあい、その通りに結婚した。 「でも…今の兄さんはニートですよね?」 「ニートじゃないわ。曲を作っているもの」  義姉さんはにっこりほほ笑んでそう返した。何の疑問も感じていないみたいだった。  兄さんには決定的な欠点があった。それは社交性が皆無なこと。そして向上心もなければ名誉欲もないことだった。その才能は確かで一時的にはちょっと有名になったのだが…  兄さんはピアノが好きでピアノを弾き続けた結果…大変いいにくいのだけれど引きこもりになってしまったのだった。 「曲って言ったってそれでお金が稼げるわけじゃないですよ? 」 「お金を稼ぐことだけが重要なことじゃないわ」 「でも今の時代ユーチューブとかにアップしたりすればお金になると思います。兄さんは才能があるんんですから」 「でも私はそういう世俗的なことを久万さんにしてほしくないの。純粋にオン学区を愛してほしい。私のわがままかもしれないけれど」  なんで働かないごくつぶしをかっている義姉さんが悪いみたいに思っているのだろう。 「働かない兄さんが悪いんだと思います」 「久万さんのこと悪く言わないでほしいの。あの人は誤解されやすい人だって分かっているけど貴史さんはたった一人の肉親なんだから」  いやいやいや、なんで俺が悪いみたいになっているのか。 「お金なら私が稼ぐわ。だから心配しないで。貴史さんの大学だって私が」 「それはやめて下さい…」  義姉さんには兄の世話に加えて自分の世話までしてもらっている。  両親が事故で亡くなったのは3年も前の事だ。身寄りはなくなったが幸い兄さんは成人していたので兄さんと暮らすことになった。そのころはまだ兄さんにも一応の社交性はあった、ような気がする。  でもほどなくして兄さんと義姉さんは結婚してその世話は全て義姉さんがすることになった。 「ごめんなさい。さしでがましかったわね」 「いや、こっちこそすいません」  義姉さんは何も悪くない。悪いのは兄さんと俺だ。さっさとこの家から出ていかないといけない。 「俺成績はいいから奨学金で大学に行けると思います」 「奨学金って言っても利子もあるし返さなくちゃいけないんでしょ? だったら私から借りたことにすればいいわ。私なら利子は取らないしお金だってできたときに返してくれればいい。私、久万さんと結婚するまでの貯金が少しあるから」  本当にやめてほしい。俺だって男だ。憧れの女性である義姉さんにそんなことさせられるわけがない。 「ありがとうございます。でも本当に大丈夫なんです。俺勉強はできるから。返さなくてもいい奨学金ももらえると思います」  俺はなんとかそういうと逃げるように学校に出かけた。  なんとか平静を装うことができたと思う。義姉さんは何も悪くない。いい人すぎて怖いくらいだ。  兄さん夫婦と同居することになったのは、両親が事故で他界したからだった。それは丁度夢の中の彼女がゲームをしようと言ってきた時のことだった。  その時、兄さんは若き天才ピアニストとして一時的に有名になったころで、両親の金使いが一変した時期でもあった。兄さんが大金を稼ぐようになったことで夫婦仲もぎくしゃくしており、そういう歪みが事故につながったのかもしれない。身寄りは他にもいたけれど、兄さんの財産を狙っているからではないかと言う疑いから信用することができず、結果的に俺は兄さん夫婦に同居することになった。好意的に考えるなら、兄さんが心のバランスを崩したのはその時、両親のどろどろとした感情を目の当たりにした事情も関係しているのかもしれない。でも、やっぱりあんまり関係ないかもしれない。兄さんがニートと化したのは義姉さんと一緒になってからだ。彼女に甘えているのは火を見るより明らかだ。  ・・・  コンサートホールで、少年がピアノを弾いている。  それは夢の光景だった。  何度も何度も何度も何度も見てきた光景だった。  今ではもう、夢の中でさえ、それが夢の光景であると知ることができる。  俺はその少年が「神様になりたい少年」であることを知っていた。  神様になるためには才能を認められなくてはならない。だから彼はピアノを弾き続ける。神様と認めてもらえるように。  コンサートの観客達は皆、神様だった。そして俺もまた神様だった。  観客席はまばらで、空席が目立つ。少年のひく音色は素晴らしいが、神様達は誰も彼に興味はない。神様達はおしゃべりに夢中でピアノなど眼中になかった。それはそうだ、彼らの目的はピアノを聞くことじゃない。綺麗な音色を聴きたいなら、気分を高揚させたいのなら、こんなところに来なくてもいくらでも方法はあった。機械はもう、人間の英知など超えて素晴らしいものを作り出せるようになっていたのだから。彼らはただ人間の才能がみたいだけだった。  誰も、少年の才能には見向きもしない。少年には才能がないから? そうではない。その理由もかつて見た夢で知っている。  このコンサートホールで曲を演奏している時点で少年には才能があった。ここに立つのを許される者は音楽を奏でる才能を定められた者の中でも一握りしかいない。才能を定められた者。この世界の人間達は生まれながら才能を知ることができた。自分たちに最もふさわしい才能を定められ生まれてきた。そしてその才能を伸ばすためだけに教育され、生きていた。  けれど才能があるだけでは駄目なのだ。人間の才能などちっぽけなものだ。機械に簡単に超えられてしまう。機械を超えるには人間が人間でしか表わせない何かを示さなくてはならない。本当にそんなものがあるのかどうかは分からない。でも俺たち神様はそれを認められた者たちだった。少なくとも神様達はあると思っている。神様達はそれを感じれる者に価値を見出していた。たとえそれが錯覚で間違いであっても。もしかしたらそれは本当の才能ではないのかもしれない。そう錯覚させる才能であって、本当に曲を演奏する才能ではないのかもしれない。人間にしかできないことが、必ずしも才能と曲を演奏する才能は必ずしも一致しているわけではないのかもしれない。神様が際の脳感じる条件は上手にピアノを弾くだけでは駄目だった。常人では考えられないとんでもないミスをすることが、機械にはない人間たる所以であり、それを糧にして初めてその才能は神の領域たる才能足りえる。神様達はそう考えていた。簡単に言うならば神様達は失敗するのを待っていた。そしてその失敗を不完全な、全く意図しない形でリカバリーした時、彼らは人の可能性を感じ、よりよく人間達を評価する。自らと同じ神様として迎えるのだ。  今曲を弾く少年は失敗はしなかった。完璧な演奏だった。人でしか出しえない人の温かみを持って完璧に弾いてみせた。けれど人でしか出しえない人の温かみは幻想でありいくらでも模倣可能なものだった。ゆえに少年は評価されなかった。  何度も見る夢の中でも、俺は少年の視点でこの出来事を夢に見ることはなかった。だから少年が何を考えているのかは分からない。淡々と感情のない仮面のような顔で少年は曲を終え舞台を去る。そしてまた別の人間が舞台に立ち曲を演奏し始める。今度はピアノではなくフルートを奏でる少女だった。  そんな観客たちの中で、ただ一人、食い入るように少年を見ている女性がいた。俺はこの女性の事を良く知っていた。  その少女は少年の姉だった。そして観客でありつつも神様ではなかった。  この世界の人間達は生まれながらにして男の才能を持つか知ることができる。そしてそれを伸ばすためにだけ生きる。けれどすべての人間が等しく才能を伸ばせるわけではない。才能を伸ばせなかった人間は神様になることを諦めて人間として生きなくてはならなかった。その人間が彼女だった。  何回も何回も何回も、俺はこの世界の夢を見た。彼女はある時は弱弱しくあるときは挑戦的に俺の視点である神様に挑む。  同じ場面を何回も見ることもあれば、過去の話になったり未来の話になったりもする。設定は一定していて彼女は少年の姉で少年の事を愛している。いや執着している。自分のなしえなかった神になるという夢を弟に託していた。  今回の夢は何回も見ている方の夢だった。だからこの先の展開も知っている。  少年の演奏を終えると彼女は立ち去ろうとして、そして俺にぶつかる。そして初めて俺に気が付いてこう言うのだ。 「あの、弟と契約くれませんか? 」  神様が人間と契約すると言うことは、人間の才能を認めたということだ。神様になるために必要なプロセスの一つだった。だが契約したからと言って必ず神様になるわけではない。神様が才能を認める法則は決まっているのだ。それを無視して雇われたとしても神様になることは出来ない。しかし少年にはもう時間がなかった。才能を認められるのは思春期の間だけだった。思春期を超えれば人の才能はその不安定な爆発力と輝きを失う。その間に神様に認められて雇われ囲われなければ神様になれる機会は二度と失われる。そうなれば少女と同じようにただの人間として生きていくしかなくなるだろう。少女は弟に神様になって欲しかった。だから必死だった。例えそれがその場限りの誤魔化しでも、俺に向かって縋るように訴えかけた。  俺は少女に興味を持った。その行動こそが失敗した人間が挽回する予測不能な才能の輝きに似ていると感じたからだ。  そして俺は目を覚ます。いつも通りに。  ・・・  ピッピッピッ…  生命維持装置が電子音を響かせている。それに繋がって眠っているのは俺の両親。事故にあい奇跡的に一命は取り留めたが植物人間となりいつ目が覚めるのかは分からない。臓器移植の同意があればそのために安楽死させられるところだったがその記録もなかったのでこのまま生かされることが決まっていた。 「…」  俺は黙って右手の消毒液を見つめた。ニュースで看護婦が点滴に消毒液を混ぜて何百人と殺した事件を報道しているのを見たことがあった。そんなに殺せたということはこの殺し方は気付かれにくいということなのだろう。もし気づかれても俺はまだ未成年、死刑になることはない。  別に、夢のことを信じているわけじゃない。  ただ偶然チャンスが訪れたというだけだ。もう両親は死んだも同じなのだから俺が悪い訳じゃない。死ぬ寸前で苦しんでいる虫がいたら潰すのが温情だという考え方もある。ああ、この例えはよくないな。これだとまるで俺が両親のことを虫だと思っているみたいじゃないか。それは違う。俺は両親を愛している。愛しているからこそ夢の中の彼女である可能性がある。このまま死なせてしまったら夢が本当なのかどうかを確かめる機会が失われる。このチャンスをみすみす見逃すのが惜しいだけだ。  ・・・ 「おはよう貴史さん。貴史さんの分もできてるからね」  義姉さんは俺に気が付くとにっこりと笑う。全て御包み込む聖女のような微笑み。  そう聖女だ。義姉さんはなぜあんな兄さんと結婚したのか。いや分かっている。だって二人は幼馴染で、二人が幼馴染ということは兄さんの弟であるところの俺も幼馴染で、二人のあらましを知っている。最も同い年の二人とは10ほども年が離れているけれど。  もし俺の周りの人たちの中で、最も夢の中の女性に近い人がいるとしたら佑香さんだろう。なんといってもその容姿だ。彼女は俺が今まであった中で、芸能人を含めても最も美しい女性だと思う。性格もお淑やかで、人の悪口も絶対に言わない。何十年も前に絶滅したはずの大和撫子が現代に現れたかのようだ。 「おはようございます」  彼女と話すとき、俺はいつも上がってしまう。平静を保つため、とってつけたような敬語で話す。佑香さんにとっては距離を取られているようで嫌がっているというのは理解できたが、それ以外にどう接していいのか分からなかった。 「兄さんは今日、ピアノを弾いていましたね」 「今日は調子がいいのね」  佑香さんの表情がぱっと輝く。  佑香さんの気分が沈んでいる時、兄さんの話題を出せば機嫌が良くなる。とても分かりやすい。  夢の中の少女は弟の事を雇ってくださいと何度も俺に訴えかけていた。弟とは即ち兄さんの事ではないだろうか? もし夢の中の少女の行動に、現在との類似点を見つけるのであれば、夢の中の少女は佑香さんで、弟は兄さんで間違いないように思える。  勿論それで佑香さんを殺そうというわけではないが、あまりに簡単にゲームクリアだとは思った。  俺は夢についてあまり本気にしてはいなかったが、何度も同じ夢を見るということについて、俺の心理的な不安定さがそうさせているのだろうとは思っていた。夢占いと言う奴だ。普段俺の抱えている心理的ストレスが夢となって表れている。夢占いでは殺す夢にはいくつかの意味があると言われている。責任から逃れたい、努力が報われない、対人ストレスがある、生まれ変わりたい等。考えてみればそれらすべてが佑香さんに対する俺の気持ちとかみ合っているように思えてならない。  俺は兄さんを思い続ける佑香さんから逃れたい、佑香さんのことを異性として意識している努力は報われない、そのことに対してストレスがある。そんな自分から生まれ変わりたいと思っている。本当に、見事なくらいマッチしている。佑香さんを殺すなど論外だが、何度も見る夢の意味は当たっていると思った。 「でも良かった貴史さんが近くの大学に行ってくれて。県外だとちょっと貯金が厳しくなったから」 「だからバイト代を入れると言っていますよ」 「ううん。学生の本分は勉強だもの貴史さんは勉強だけを頑張ってほしいの」  結局俺は義姉さんの元を離れることはなかった。だって離れてしまったら兄さんや義姉さんの身に何かあった時近くにいることができない。とどめを刺すことができなくなってしまうからだ。  それは少しづつの積み重ねだった。何度も何度も同じ夢を見ている内にいつしか俺はその思考に染まっていった。でも決して狂っているわけじゃない。この世界のルールに合わせて現実とすり合わせしたのだ。夢の中の彼女は俺の大切な人になるという。そして俺の大切な人は今兄さんと義姉さんしかいない。このまま増えなければ2人のどちらかが夢の中の女性と言うことになる。  だから、いつか、2人が老衰して死ぬときにでも殺してやれば俺は犯罪を犯すことなくゲームをクリアすることができるだろう。 「義姉さんは兄さんに神様になってほしいですか? 」 「一体どうしたの? 」  義姉さんは冗談だと思ってほほ笑んでいる。  彼女は世の中の悪いことを知らない。挫折することなく勉学に励み給料のいい会社に入り子供のころからの憧れの王子を手に入れた。王子様はニートになってしまったが彼女はそれでもいいらしい。そう考えると彼女は幸せな人なのかもしれない。そしてそれが俺を迷わせる。挫折を知らない彼女が語る理想、そして見返りを求めない愛が彼女を聖女のよう見せるからだ。 「いえ愛だなと思って」  俺はこの先その真実の愛を見ながら生きていくことだろう。それは俺にとって幸せなことだった。
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