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通りに面した展示室から廊下を通り奥へ進む。
美術館の様な造りの展示室の突き当りの壁一面にポスターの作品が飾られていた。
ポスターで見るよりも暗く見える真っ赤な太陽がどこか不気味で身震いをする。
「面白い構図でしょう?作者の視点が水面下から水面へ向けられていて、ポスターでは解りませんが、ここに小さな手が描かれています」
水底から左手が伸び太陽を掴もうとしている様にも見える。
私は益々その作品に引き込まれた。
案内をしてくれた黒髪の女性は「どうぞ、ごゆっくり」と一言告げると展示室から姿を消した。
中央に置かれている黒の革張りの正方形のソファーに腰を下ろし作品を眺める。
題名が気になり腰を上げた。
『オブシディアン(黒曜石)の泉で 作品No483 作者 鷹庄凱』
画面の黒い下方が黒曜石なのだと合点がいった。
薄暗い展示室で作品と向き合っていると自分が水中にいるように錯覚する。
部屋全体が泉の底の様で私は息を止め目を閉じると静かにここまでの道のりに思いを馳せた。
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