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あるときだった。またしても褒められ、客の肩に当てられた。
客は恥ずかしさを含む笑顔で、鏡の中を見つめる。
「素敵な紅花染だけど、私にこの色は若すぎるかしら」
初老の女はそう言ったが、薄ピンクと薄紫の色味は、小柄で色白の彼女に良く似合っていた。
しばらくして、主人はその客を見送りに出た。客のほうも、主人が見えなくなるまで会釈をしていた。
彼女は銀杏並木の中に消えていった。木々の隙間から、夕日が煌めいていた。
しばらくして、反物は着物になって、彼女の元に届いた。
閉店間際、彼女はボサボサの頭で店へやってきて、厚い封筒を店長へ渡した。
着物は晴れて、納品された。
銀杏の葉が夜道に散りばめられた、美しい夜だった。
着物は彼女が着てくれる日を、楽しみに待った。
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