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なんだか物忘れが多くなった気がするのだ。
まさか、ここが自分の家だということがわからなくなって、黙って出ていってしまったのではないか。
玄関に行ってみると、良子のサンダルがたたきにちゃんと置いてあった。
しかし、良子がお出かけ用に使っている赤い靴がどこにも見当たらない。靴箱の中にもないようだ。
妻は外に出るときは大概、あのお出かけ用の靴を履くのだ。
「ばあさん、どこかへいってしまったのかな」
警察に電話してみようか、とも考えてみる。
しかし、まだ事件だと決まったわけではないのだ。
とりあえず近所を探しまわってみることにした。
良子はよく、公園で近所の主婦と立ち話を長い間している場合がある。
よし、まずは公園だな。
幸助の家は、住宅街の真ん中にあり、百メートルほどの距離には児童公園が一つある。
時刻は午後二時半。この時間帯だと、子供連れの母親たちと立ち話をしている可能性が大きい。
幸助は公園へと歩き出した。
「まったく、困ったばあさんだな」
ぶつぶつと文句をいいながら歩き、公園に到着した。
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