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思った通り、園内には遊具で子供を遊ばせている母親たちが四人ほどいたが、肝心の良子は見当たらない。
幸助は母親の一人に声をかけた。
「こんにちは」
「あら、原田さん。こんにちは」
「うちの妻を見かけなかったかな?」
「いいえ、見ていませんよ、ここのところ全然」
「そうかね。どうもありがとう」
幸助は頭を下げ、公園を出た。
妻はいったいどこへいってしまったのだろうか。
そうだ、買い物だ。夕飯の食材を買いにいったのかもしれない。
スーパーマーケットまで足を運んでみよう。
駅前にあるチェーンのスーパーは、惣菜の質がよく、値段も安いと評判である。
まだ夕飯の買い物には少々早いが、物忘れの激しくなった良子がスーパーにいることは十分に考えられる。
今度は、少し早足で駅前へと向かう。
だんだんと心配になってきたのだ。変な事件にでも巻き込まれていなければいいが……。
先ほどの情報番組のニュースが頭をよぎる。
最近は物騒な世の中になってきた。
良子が凶悪な事件に遭遇していないことを祈ろう。
駆け足で来たので、十五分ほどでスーパーにたどり着いた。
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