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ハンカチで頭の汗をぬぐい、幸助は店内へと足を踏み入れた。
まずはお惣菜売り場だ。
時間が時間なので、店内はあまり混雑していない。
売り場に良子の姿があるだろうと少し期待したが、それは期待外れに終わった。
ほかの売り場もしっかりと回ってみたが、どこにも妻の姿は発見できない。
そろそろ警察に電話してみたほうがいいのか。
そう思い、ポケットに手を突っ込んでみてハッとした。
携帯電話がない……。
おそらく自宅の充電器のところに置いたままになっているのだろう。
「くそ、こんな大事なときに」
しかし、まだ警察に電話するのは早い気もする。
次はどこを探してみようか。
よし、図書館を探してみるか。
良子は大の読書好きで、書店や図書館に足を運ぶ頻度が高い。
書店は少し遠いから、良子が歩いていくとは考えにくい。
幸助は図書館までの道のりを走っていった。
建物の前まできて、ふと立ち止まる。
入り口の自動ドアの前に、看板が立てかけてある。
「本日は休館日です」
しまった、休みだったか。
肩で息をしていた幸助は、その場で深く深呼吸した。
急に妻の優しい顔が心に浮かぶ。
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