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書店に到着したときには、時刻は三時半を過ぎていた。
あまり広くない店内は、ガラス張りになっていて、外から中を見渡せる。
小学生が数人、マンガコーナーにいるほかに客は見当たらない。
「仕方ない。そろそろ警察に電話してみるか」
携帯電話がないので、書店のそばにある電話ボックスに入った。
ズボンのポケットに手を突っ込み、幸助は舌打ちした。
財布がないのだ。いつもポケットに財布を入れておくのが習慣だったはずなのに。
こんな大事なときに……。
なんだか胸騒ぎがしてきた。良子の身になにか、悪いことが起こっているような気がしてならない。
想像もしなくないが、たとえば殺人事件とか……。
幸助は急いで書店の中に入り、カウンターの向こうにいる女性店員に声をかけた。
「すみません。ちょっと電話をお借りしたいのだが」
「はい、いいですよ」
「実は妻を探してるんだけどね、どこにもいなくて。それで警察にかけようと思うんだが」
「まあ、それは心配ですね。さあ、どうぞ」
幸助はカウンターの上の電話機で、警察に電話をかけた。
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