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「もしもし警察かね。実はうちの妻が家を出たきり、どこかへいってしまったようで」
オペレーターは「すぐに向かいます」といってくれた。
店員に礼をいい、幸助は店の外へ出てパトカーの到着を待つことにした。
やがて遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
パトカーが遠くに見えたので、幸助は手を大きく振った。
パトカーは幸助のすぐ前で静かに停車した。
中から二人の男性警察官が降りてきて、幸助の顔をじっと見つめた。
そして、警察官はこう訊ねた。
「通報してくれた原田幸助さんですか?」
幸助は黙ってうなずく。
二人の警察官は不思議そうに顔を見合わせて、ひそひそと囁きあった。
「この人が先ほど県警から連絡のあった容疑者か。まさか容疑者のほうから通報があるとはな……」
「信じられませんね。まあ、とにかく早く逮捕しないと」
「そうだな。おい、原田幸助。殺人の容疑で逮捕する」
幸助の腕にがちゃりと重い感触があった。
それは手錠だった。
近所の主婦たちが、家宅捜索の始まった幸助の自宅のすぐそばに集まって、噂話をしていた。
「原田さんのご主人の件、恐ろしいわねえ」
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