soPhia

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「これは?」 遠矢は面会室で首をひねっていた。わたしがスマホと充電器を差し入れたからだ。 「特別に許可してもらったわ。そのかわり通信制限がかかってる。発信はできないし、受信も限られる。オーケー?」 「いやそれでもまずいでしょ。ぼくは重罪犯なんですから…」 「あんただけよ、そう考えてるのは。まあそう考えて反省するのはいいことなんだけど、あたしは真実に向き合って生きてんだ。それをごまかすほど腐っちゃいないわ」 「意味わかりません…」 こいつの父親を殺したのはアメリカの企業だ。その証拠はセラムが握っていた。母親とその愛人はセラムに殺された。遠矢はその事実をセラムから知らされただけだ。学校での連続不審死も、遠矢はじめ弱い生徒をいじめていたグループをセラムが事故に見せかけ殺していった。すべて遠矢のためだった。父親としての意識が、セラムにあったからそうなったんだろう。 「それであんたが欲出して、何でもできるって思いこんじゃったから悪いのよ」 「はあ…反省してます。でも、変なことするつもりはなかったんです。ほんとうに。ただ話がしたかった…それだけです」 「話がしたいだけで下着見せろとはふつう言わないけど!」 「すいません…調子に乗りました」 「まったく…」 それを通報してきたのもセラムだった。父親として見過ごせなかったんだろうけどね。まったく、死んでからも父親なんて、なんて傲慢なんでしょうね。 「そのスマホに入っているのはセラムだけど、もうAIのそれじゃないわ。警視庁サイバー課のAI『ソフィア』がセラムをただの検索エンジンにしちゃったわ。もう悪さはできないけど、勉強の役には立つでしょう」 そう言って添田という家裁調査官は帰って行った。ぼくは少年刑務所には行かず、鑑別所という施設に送られた。 「おまえ、添田に捕まったんだって?」 高校生くらいのガタイのいいやつが同室になった。ひどいいじめにあうかと思っていたが、みんなぼくに気を使ってくれた。 「あの女怖えからなあ…。シャバに出ても、あいつだけにはもうかかわるなよ。んでもあいつしつけえからなあ…」 同室のものはみな添田さんを知っているようだった。だからぼくのスマホも取り上げられたりせず、たまにみんなでオンライン動画を見たりしている。なんだかとてもおかしかった。 朝目覚めると、そこはいつもと変わらない場所。布団を畳み、掃除をして、顔を洗う。そうして電源を入れる…。 「おはよう、セラム」 スマホにはぼくと、父さんの顔が映っていた。
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