seRum

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seRum

セラムはAIだ。いわゆる人工知能ってやつ。そのおおもとは、数十年前に、アメリカの企業と中国の企業が合弁で作った情報ネットワークサービスにさかのぼる。 通信を通して合法・非合法かかわらずあらゆる通信を取り込み精査するそのプログラムを築き上げたのは、何を隠そうぼくの父だ。マサチューセッツ工科大学の主席研究員だったぼくの父が開発したセラム、というシステムがそのおおもとになった。 あいにくその父は昨年、飛行機事故で亡くなった。アメリカから日本に一時帰国するために乗り合わせた飛行機が墜落したのだ。 最初はひどく落ち込んだが、やがて立ち直った。それは父が残してくれたもののおかげだった。 「そちらの道は今日は危険です。よくない者たちが集まっています。彼らの通信でそれがわかります」 「ふうん、ねえそれって悪者?」 ぼくはスマホに語りかける。スマホはたんなるデバイスだ。AIのセラムはどこにでも存在する。たとえばそこの自動販売機にも。 ガコン その自販機から音がした。勝手に缶コーヒーが取り出し口に出てきたのだ。 「あー、頼んでないよ、セラム」 「体の水分量が減少しています。缶コーヒー1缶分の水分をお摂りください」 「なんで缶コーヒーなんだよ。しかも無糖」 「糖分は十分すぎるほど間に合っていますので」 「じゃあお茶かなんかで」 「あなたはお茶は飲まない」 なんでもセラムの言うことを聞いていれば間違いない。だけどそれじゃ面白くない。だってぼくは人間なんだもん。 「おいおまえ、さっきから何見てんだよ」 チンピラがぼくの目の前に立っていた。すっげえ悪そうな顔だ。人格って顔に出るものなんだ。ぼくはそのとき強く思った。
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