0人が本棚に入れています
本棚に追加
hooDlum
派手な服、派手な髪の色、そして馬鹿そうな面。いわゆるチンピラっていう部類の人間だ。強さで言うと中くらいレベル。人格は最低。もちろん魔法は使えない。それがチンピラ。RPGだと初心者冒険者じゃ倒されちゃう。中級冒険者でもキツイ。なによりもこいつは集団で来るからだ。相手するならパーティを組まなきゃならないけど、いまはぼくひとりだ。
いやひとりじゃない。魔法使いがいる。それも最強のね。
「なにボーっとしてんだこのガキ!」
いきなりそいつはぼくの胸ぐらをつかんで近くの駐車場に連れ込んだ。やはりそこに仲間がいたようだ。見るからに整備不良な車体の車のまわりに、こいつと同じような感じのチンピラが五人、いた。
「なんだよアキオ、そいつは」
そのなかのひとりがそう言った。
「いやなんか調子こいてるやつがいたんでな」
因縁つけて暴力をふるい金を巻き上げる。これがこの世界の出現モンスターだ。まあゲームじゃないけどね。
「やめてくださいと言ってもやめてくれないんでしょ?でもやめた方がいいですよ?命が惜しかったら」
「はあ?」
チンピラたちはおかしなものでも見るようにぼくを見た。まあチンピラたちは悪くない。この場合、チンピラたちがまともで、ぼくが異常なんだから。
「生意気言ってんじゃねえ!」
蹴りがとんできました。まともに受けたらぼくなんか吹っ飛んじゃいます。でも大丈夫。いま駐車場に入って来た車にそいつが弾き飛ばされたからです。いやあ、アクセル全開で駐車場に飛び込んでくるなんて、危ないなあ…。
「な、なにやってんだ…」
ほかのチンピラが気を取られてます。ほんとうなら逃げればいいんだけど、今朝のぼくはちょっと虫の居所が悪かったんでしょう。それをセラムはちゃんとわかってくれたんです。
「ぎゃあああああっ!」
「ひいいいっ!」
チンピラを轢いた車がバックしてきました。それもものすごい勢いでです。どうやらアクセルとブレーキを踏み間違えたんでしょう。それはとても凄惨な光景でした。なんどもなんどもその車にチンピラたちは轢かれ続けました。内臓は飛び出し、もはや人の形を成さないまで…。
ぼくは人が来ないうちにその駐車場から出て行きました。もちろん通報なんかしません。ぼくの責任じゃないからです。
最初のコメントを投稿しよう!