criSis

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教室には鍵がかかっている。いまは全校警備強化され、各教室はすべて電子ロックがかけられている。職員室の当直の先生がすべて管理しているのだ。当然各教室には監視カメラや音声センサーもあり、学校内での事故や事件は未然に防げるようになった。だがそれがぼくにとって都合がいいのさ。 「ドアを開けてくれ」 教室のドアの前に立ったぼくは、スマホにそうしゃべった。ドアは開錠された。もちろん監視カメラや音声モニターは無効化した。そうしてドアを開けると、立花さんがぎょっとした顔でぼくを見ていた。 「あ、あの…」 「あ、立花さんいたの?ぼく教科書忘れちゃって、取りに来たんだ」 「あ、ああそう。あたしはもう帰るとこだから…」 そう言って立花さんはカバンをつかんで教室から出ようとした。ぼくへの恐怖心がありありと浮かんでいた。 「そう急がなくてもいいんじゃない?ちょっと話そうよ」 「話なんかないです」 そう言って立花さんは教室のドアを開けようとした。だがドアは開かない。そりゃそうだ。ぼくがセラムにそう命じたからだ。もうこの教室からは出られない。もちろん誰も入って来れない。 「ちょっと、いい加減にしてよ!」 立花さんは怒ったようだ。だけど、顔は恐怖で歪んでいるよ?可愛い顔が台無しだ。立花さんは自分のスマホを取り出して、どこかにかけようとしている。あーあ、無駄なのに。 「なにしたのよ?」 「なにが?」 「あんたなにしたのよ!スマホつながんなくなっちゃったじゃない!」 「ぼくのせいじゃないよ」 AIのセラムがやったんだ。 「あんたいったい…」 「そう恐がらずに、きみのスマホを見てごらんよ。なにが映ってる?」 彼女はスマホを見て真っ青になった。そりゃそうだ。彼女が映っている。きのうの、おとといの、そのずっと前からの。 「なにこれ…」 「きみを見ていたんだ。きみのすべて知ってるよ。部屋にいるときも寝てるときも…もちろんお風呂に入っているときも」 「いやあああっ!」 そんなに驚くことないじゃないか。まあ危険だって知らないか…。スマホなんか風呂に持って入っちゃいけないなんて。いつだってきみの姿はきみのスマホから見えるんだよ…。
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