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引退が決まっていた唯花にとっての最後のライブが終わった後の控室で、あたしは色紙を持って唯花の帰りを待った。
あたしは唯花の力いっぱいに披露する気持ちを込めた歌声に誰よりも惹きつけられ、そして今日までの長い道のりを思い感謝した。
周りのスタッフや出演者たちは拍手を送りながら色紙にメッセージを書いて、あたしに色紙を渡して、それを「華蓮さんが渡してほしい」と言われ、手渡された。
受け取ったあたしは責任重大だなって思うと同時にみんなから唯花との絆を認められた気持ちになれてたまらなく嬉しかった。
私はちゃんと自分の気持ちを伝えられるように涙を必死に堪えて、花束を持ってやってきた煌びやかな衣装に身を包んだ唯花にこれからも応援したい気持ちを伝えた。
「華蓮、ありがとうね」
唯花はこの後、急ぎの用事があるのか色紙を受け取った後で支度を済ませて花束を手にライブ衣装のまま控室を出ようと最後にあたしへ改めて声を掛けた。
「こちらこそ。あたし、全力でこれからも応援してるから。
だから、頑張って」
あたしは出来る限りの笑顔で唯花に向けて、別れ際こう答えた。
「うん、私ね、分かったの、自分が本当は誰のそばにいたいのか。
だから、もう大丈夫だよ。色々、相談に乗ってくれてありがとうね」
満面の笑みで手を振って控室を出ていく唯花の姿が映った。
その姿は晴れやかで、迷いなんてなくて、今までで一番光り輝いて見えた。
「そっか……、唯花は自分が恋をしていることに気付けたんだね……」
ずっと見ていたあたしにはそれがはっきりと分かった。
化粧を施した唯花が恋する乙女のような透明な瞳で会いたい人のいる場所へと駆けていく。
あたしは唯花をそんな風に心変わりさせてしまう男に嫉妬すると同時に、ずっと友達として唯花のことをそばで見ていたいと思った。
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