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当然、本人達の気持ちなどお構い無しで、『別れるように!』と言われた宏樹。
私の両親が、町の小さなケーキ屋を経営していて、宏樹の家との格差を指摘されたのだ。
でも宏樹は、「ケーキ屋の何が悪いんだ!」と、お父様に噛みついたようだが、自分自身もまだこれから修行する身。それ以上、何も言えなかったようだ。
それと同時に、私の所にもお父様の使いの方が来られて、「宏樹さんと別れてください」と札束の入った封筒を差し出された。
TVドラマに出てくるようなシチュエーションが、現実にあるのだ! と驚いた。
当然、受け取らなかったが、宏樹と私の育って来た環境が余りにも違い過ぎることを痛感させられた。
それでも、お互い離れたくなくて、しばらくは、そのまま目を盗んで逢っていたが、「別れなければ、ご両親のお店を潰すことなんて簡単だし、貴女がお勤めのお店に圧を掛けることだって出来るんですよ」と、脅された。
自分のせいで、両親やお店の方々に迷惑をかけるわけにはいかない。
私は、宏樹との連絡を絶つことしか出来なかった。
それが、宏樹の為になるのなら……
その時は、本当にそう思っていたから。
そして、職場の上司から半年間、他店へ出向する話を提案されたので、最南端に店舗がある鹿児島県へ1人行くことにした。
しかし、宏樹と二度と逢えない現実に、私は、毎日泣いて過ごすことしか出来なかった。
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