復縁

1/7
前へ
/57ページ
次へ

復縁

鹿児島へ出向したのは、宏樹と別れた22歳の3月から半年間だけ。秋には、都内に戻ってきた。 なるべく宏樹と会わないようにと、店側の配慮で接客には立たず、厨房でパティシエとして頑張っていた。 なので、宏樹とは、それから3年ほど顔を合わせることはなかった。熱りも冷めた頃に、そろそろシフトの関係で、接客にも回った。 そんなある日 「いらっしゃいませ」 「優里?」 「え? あ!」 ──宏樹! 突然の宏樹との再会だった。 仕事中だから、元カレの名前など出せない。 「久しぶり!」と言う宏樹に、戸惑いながら、 「あ、うん、久しぶり」と小声で挨拶した。 自分の周りだけ、一気に空気が変わったような気がした。3年ぶりの再会。お互い25歳を過ぎていた。 宏樹は、私より誕生日が早いので、少し前に26歳になったはず。 ──どうして? 宏樹のマンションからは離れている。今は、引っ越して、この辺りに住んでいるのかなあ? 平静を装い 「ご注文をどうぞ」 「あ、このホールケーキを……」 宏樹は、小ぶりな4号12センチのイチゴのホールケーキを指差した。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

411人が本棚に入れています
本棚に追加