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復縁
鹿児島へ出向したのは、宏樹と別れた22歳の3月から半年間だけ。秋には、都内に戻ってきた。
なるべく宏樹と会わないようにと、店側の配慮で接客には立たず、厨房でパティシエとして頑張っていた。
なので、宏樹とは、それから3年ほど顔を合わせることはなかった。熱りも冷めた頃に、そろそろシフトの関係で、接客にも回った。
そんなある日
「いらっしゃいませ」
「優里?」
「え? あ!」
──宏樹!
突然の宏樹との再会だった。
仕事中だから、元カレの名前など出せない。
「久しぶり!」と言う宏樹に、戸惑いながら、
「あ、うん、久しぶり」と小声で挨拶した。
自分の周りだけ、一気に空気が変わったような気がした。3年ぶりの再会。お互い25歳を過ぎていた。
宏樹は、私より誕生日が早いので、少し前に26歳になったはず。
──どうして? 宏樹のマンションからは離れている。今は、引っ越して、この辺りに住んでいるのかなあ?
平静を装い
「ご注文をどうぞ」
「あ、このホールケーキを……」
宏樹は、小ぶりな4号12センチのイチゴのホールケーキを指差した。
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