411人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜、1人きりの部屋で名刺を眺めていた。
──お父様の会社で頑張ってるんだね。
宏樹は、大手製パン会社の社長のご子息だ。
私は、3年ぶりにメッセージのブロックを解いた。
しばらくすると、宏樹からメッセージが届いた。
〈こんばんは! お疲れ様。驚いたよ! まだ、あのお店で働いてたんだね〉
〈こんばんは、お疲れ様。私も驚いたよ! まさか、お店に来るなんて……〉
〈前にも行ったよ! でも、その時は優里居なかった〉
月日が流れて、久しぶりに呼び捨てにされる名前に、きゅんとした。
やはり、アノ時、宏樹は私を探していたんだ。
〈そうなんだ……〉
〈だから、もう辞めたのかと思ってた〉
〈一時期、出向してたからね。でも、今も変わらず働いてるよ〉
〈そっか〜〉
そんな他愛もない話をしていた。
その時は、どうしてお店に来たのだろう?
誰の為に何を買いに来たのだろう?
その理由を知るのが怖かった。知る勇気もなくて、聞けなかった。
〈ホント久しぶり! 元気だったか?〉
〈うん。そちらも、お元気そうで良かった〉
〈まあな。あんな別れ方をしたから、しばらく魂が抜けたみたいに、ずっと上の空だったけどな 笑笑〉
〈そうなんだ……〉
なんと返せば良いのか分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!