復縁

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その夜、1人きりの部屋で名刺を眺めていた。 ──お父様の会社で頑張ってるんだね。 宏樹は、大手製パン会社の社長のご子息だ。 私は、3年ぶりにメッセージのブロックを解いた。 しばらくすると、宏樹からメッセージが届いた。 〈こんばんは! お疲れ様。驚いたよ! まだ、あのお店で働いてたんだね〉 〈こんばんは、お疲れ様。私も驚いたよ! まさか、お店に来るなんて……〉 〈前にも行ったよ! でも、その時は居なかった〉 月日が流れて、久しぶりに呼び捨てにされる名前に、きゅんとした。 やはり、アノ時、宏樹は私を探していたんだ。 〈そうなんだ……〉 〈だから、もう辞めたのかと思ってた〉 〈一時期、出向してたからね。でも、今も変わらず働いてるよ〉 〈そっか〜〉 そんな他愛もない話をしていた。 その時は、どうしてお店に来たのだろう?  誰の為に何を買いに来たのだろう?  その理由を知るのが怖かった。知る勇気もなくて、聞けなかった。 〈ホント久しぶり! 元気だったか?〉 〈うん。も、お元気そうで良かった〉 〈まあな。あんな別れ方をしたから、しばらく魂が抜けたみたいに、ずっと上の空だったけどな 笑笑〉 〈そうなんだ……〉 なんと返せば良いのか分からなかった。
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