秘恋の毒師

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 以前、夢は何かと彼に問われ、目標ならばあると答えた。  陛下をあらゆる毒からお救いする、万能の解毒剤を作りあげること――それを、王はおぼえてくれていた。  〈5〉の目から涙が落ちた。  その間に騎士は、従者を呼んだ。従者は籠を持っていた。 「陛下からだ」  籠には、新たな衣服が入っていた。短く切られた髪を隠す美しい布まで入っていた。  そして、たまたま手近にあったのだろうか――花が添えられていた。  本来ならば鈴なりに咲くその花の一房を見つめ、〈5〉は泣きながら微笑んだ。 《了》
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