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一般人はもちろん、毒師としてはなおのこと許されるはずがない大罪だった。
ただ、気になることがひとつある。これだけは確かめておきたい。
「陛下は、ご無事でございましょうか」
「教える義務はない」
ではご無事だったのだ――と〈5〉は安堵した。
それほど重篤な症状ではないと診てはいたが、万が一ということもある。
もしも王が特にその毒に弱い体質であったら、もしも治療中のどさくさまぎれに陰謀が企まれたら――囚われているあいだ、際限なく浮かんでは胸を押しつぶした不安は、毒と同等に〈5〉を蝕んだ。
だがいま、胸のつかえは取れた。
〈5〉は晴れ晴れと毒師に言った。
「どのような処分もお受けいたします。どうぞ、お言いつけください」
処刑される覚悟はできている。自裁用の毒を差し出されても、素直に飲むつもりだった。
だが毒師は憎々しげに言った。
「ひと思いに楽になれると思うな。毒砂鉱で死ぬまで働け」
鉱夫も三か月ごとの交代を義務づけられる、猛毒を含む鉱石が採れる鉱山だった。
そこで交代なく、さらに女の身で働くということは、死刑判決に等しい。
いや、じわじわと毒に蝕まれて苦しみながら死んでいくという意味では、それ以上の罰だった。
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