秘恋の毒師

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 王のために自分に死がもたらされることについて、〈5〉はなんら思うことはなかった。  毒師になる、ということはそういう意味だった。  人生に悔いはない。  一時とはいえ、彼のそばにいるという夢はかなったのだから。  そして、役目とはいえ、彼を苦しめねばならない務めからも解放されたのだから。  しかも彼は、かつて〈5〉が話したことをおぼえていてくれた。  これ以上、何を望むことがあるだろう。  あの日偶然出会った彼に、人生を捧げるほどに惹かれたのは、彼が王子だったからではない。  快活で、自信を持ち、みずからの意志でみずからの行動を決めていく自由な強さに心を奪われた。  年の離れた金持ちとの結婚を押しつける両親に逆らい、自分で自分の人生を選び取る勇気をくれたのは、間違いなく彼だった。  毒師となってそば近く仕えてみると、彼は思ったよりも不自由な人間だった。  意見は家臣たちにつぶされ、生活は制限され、その上命を狙われる。  だが、それでも彼はやはり彼だった。  どうしても賛同できない解毒剤の習慣をやめるために、こうして行動し、成功した。  〈5〉は、もはや隠す布のない顔で微笑んだ。  そのときだった。  外で何やら声がして、いきなり護送車が止まった。
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