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内部に体を支えられるものは何もない。〈5〉は硬い床に転がった。
体を起こしたとき、護送車の扉が開いた。
「――出よ」
一斉にさしこんだ外の光のまぶしさに、〈5〉はおもわず手をあげかけ、やめた。
罪人には、勝手なふるまいは許されない。
短い命令に従って、なかば手探りで護送車を出る。
そこにいたのは、王の親衛隊の制服を着た騎士だった。
〈5〉の布切れのような服と短い髪に、騎士は顔をしかめた。
予定が変わり、やはり処刑されることになったのだろうか。
〈5〉は子供のように無心に騎士を見上げた。
「陛下の思し召しである。来い」
騎士は馬車を用意していた。
護送車とはまるで違う乗り心地のいい馬車は、王自身が使うものだった。
〈5〉はとまどいながらも、従うしかなかった。
馬車は軽快に走り、やがて館の前で止まった。
「このたびの責任者として、今後はこの館の菜園の世話を命じる。励め」
騎士の言葉に〈5〉はとまどった。
こんなものは罰とは言えない。
「ですが、なぜ――」
「陛下よりお言葉を預かっている。心して聞け」
〈5〉は急いでかしこまった。
「陛下はこうおっしゃった――ここでおまえの目標を達成しろ、と」
〈5〉は息を呑んだ。
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