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先ほどの会話の続きだと、そこでようやく気づく。
夢――問われて、〈5〉は答えた。
「……目標ならば」
「それは?」
「陛下をあらゆる毒からお救いする、万能の解毒剤を作りあげることにございます」
国王という立場には敵が多い。
国内の貴族や他国の王のみならず、親族、家臣すら利害のためにたやすく敵に回る。
現在の王の祖父は毒殺され、みずからを守るために毒師を取り立てて研究をはじめさせた王の父も毒殺を疑われる症状で命を落とした。
その後、毒師の装束の中の者は入れ替わってきたが、ひとたび毒師となった者の任務はずっと変わらない。
王を毒から守ること。
そのためだけに、王の九人の毒師は存在する。
「だからそれまでは、こんなものを飲めと言うのだな。毒に染まり、毒に倒れぬ、毒そのものとなれ、と」
王は冷ややかに嗤った。
毎夜王に飲ませる解毒剤に含まれているのは、王が盛られた可能性がある毒を消す解毒の薬ばかりではない。
ごく微量の毒も含んでいる。
先代の毒師たちは何十人もの奴隷を使って、ほんのわずかな毒を摂取することによって毒への耐性をつける方法を導き出した。
だから今日も、慎重に彼の体調を見極めながら〈5〉は王に毒を渡す。
「――くだらん」
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