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いつものように夜の解毒剤を調合し、〈5〉は自分で飲んで安全を確かめてから王に渡した。
昨夜の発言のあとだ。
拒まれたらどうしようかと、〈5〉は顔に垂らした布の下でひそかに緊張した。
だが王は、むしろいつもよりいやがらずに受け取り、飲み干した。
「そういえば聞いたことがなかったな。〈5〉、おまえはなぜ毒師になろうと思った?」
ゆったりと椅子に沈みこんで、王は大きなため息をつきながら言った。
「常に毒に触れて危ないというのに、見返りは薄い務めだ。何かよほどの理由があったのか?」
あった。だが、まさか当の本人に話すわけにはいかない。
〈5〉は懸命に動揺を押し殺した。
「……そのようなことは話さぬのが、毒師の決まりにございます」
きちんと言えただろうか。声が震えなかっただろうか。
そして王は、毒師の決まりを思い出して納得してくれただろうか。
布の下で唇を軽く噛みしめながら、〈5〉は王の様子をうかがった。
「――」
王は何かを言おうとした。
だが、その顔が不意にゆがんだ。
〈5〉は、自分の顔から血が引く音を聞いた気がした。
「陛下!?」
ただ顔をしかめたわけではない。明らかに苦悶の表情だ。
「失礼いたします!」
震える指先で彼の脈をとる。
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