6人が本棚に入れています
本棚に追加
このまま時が止まればいいのにな、と思ってしまった。そうすれば私は永遠にこのホームにいることができる──。
だが、閉まるドア、駅のアナウンス、発車の合図。運転士が鳴らした短い警笛とともに、私は静かに走り出す。
地下区間にもかかわらず窓を開けている乗客がいた。彼は「地下の匂いが好き」と笑っていた。京都河原町駅での停車中、座席で寝入ってしまった乗客は、発車とともに目を開いた。彼女は無言で膝に置いたかばんをぎゅっとつかんだ。
そんなひとりひとりの思いを乗せてのラストラン。人々の思いの重さを受け止め、私は安全走行を誓った。
最初のコメントを投稿しよう!