ザ・ラストラン

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 地下区間を抜けて地上に出ると、優しい空が広がっていた。  昨夜の予報では今日は曇り。だが、予報に反して広がる青空。それもだいぶ色が褪せて、夕陽に染まったオレンジ色の領域が広くなりつつある。まさに私の最後の仕事にふさわしい空模様だ。  京都本線の眺めはいい。右手に臨む西山、またぐ桂川。JRとの並走区間もある。びゅんとすれ違う新幹線。あの中から私に気づいた乗客はいるだろうか。  大山崎駅付近で、7000系とすれ違った。これは「京とれいん雅洛(がらく)」という愛称で親しまれる観光特急。私の後輩にあたる車両だが、外観も内装も華やかに改造されて、より観光気分が味わえる。だからこれからも多くの観光客に親しまれることだろう。頑張れよ、と密かにエールを送った。  ふと、沿線の移り変わりが脳裏に浮かんだ。50年の間に京都本線の駅は3つも増え、沿線の景観も少しずつ変わっていった。中でも私が最も気にしている淡路駅の高架化事業。もうそれを見届けることはかなわないが、無事に工事が完了することを祈る。
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