時間の色に染まる

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次の週末、約束の自宅に現れた藤田さんがスーツ姿だったので、ラフなジーンズで梅酒の瓶を抱えた姿しか見たことのない私は、少なからず驚いた。 「僕は、今日、仕事で来ました。」 そう言って二人の叔母と、ついでに私にも司法書士の肩書のついた名刺を渡すと、祖母が生前、公正証書遺言を作成していたこと、その中で、この家と土地は、私に遺贈すること、それ以外の預貯金やアパート、株式といった財産は、 二人の叔母と、もう亡くなっていた、私が父だと思っていた人の妻と子供で分けてほしいことが記載されていることを淀みなく説明した。 そして最後に、 「僕が遺言執行者として、責任をもって手続きをします」 と締めくくった藤田さんは、実に頼もしく、かっこよかった。 私は、目まぐるしく状況が変わっていくことが、信じられなかった。
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