時間の色に染まる

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「おばあちゃんは、どうして私に本当のこと言ってくれなかったのかな。  それを聞いて怒ったり反抗したりするほど、子供じゃなかったつもりなんだけど。」 二人の叔母が帰った後、梅酒の力も少し借りて、藤田さんには、本音を言えた。 「初めは、言うつもりだったみたいだよ。高校を卒業したら、とか、大学を卒業したら、とか、ちょっとずつ伸び伸びになって、そうしてるうちに、おばあさんは歳をとりすぎてしまったのかな。  琴子ちゃんとの関係が変わってしまったら、つらい、って言うようになってね。僕も、琴子ちゃんはもう十分大人なんだから、関係が変わってしまうなんてこと、ないと思いますよ、って何度か言ったんだけど。  そうすれば、養子縁組の話もできたんだけど、どうしてもできない、っていうから、代わりに、遺言公正証書っていう方法を提案して、作ることにしたんだよ。」 ぽつり、ぽつりと、藤田さんは話してくれた。 「ありがとうございます。私には、この家を残してもらっただけで、十分すぎる位です。」 私は頭を下げた。 できることなら、祖母にもこんな風にしっかり頭を下げてお礼が言いたかった。
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