時間の色に染まる

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長年下宿を営んで、食べ盛りの学生たちに毎日ご飯を食べさせていただけあって、祖母は台所仕事が好きな人だった。 毎日の食事はもちろん、漬物とか、干し柿とか、日持ちのするものをせっせと手作りしては、家に遊びに来る元学生さんたちに手土産に持たせたり、娘たちに送ったりしていた。 私が学校から帰ると、祖母は、台所で何かの仕込みをしているか、ダイニングテーブルで読書をしているかのどちらかで、今日、学校であったことを話し出す前に、 「まずは宿題を片付けてしまいなさい」 と言うのだった。 「知識と資格は、どんなに沢山あっても重くなることはないからね。」
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