時間の色に染まる

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梅仕事の季節には、もう一つ、藤田さんが来るのも、楽しみだった。 藤田さんは、昔祖母が下宿をしていた時の店子さんで、祖母曰く、 「うちにいた学生さんの中で一番勉強が出来て、一番呑兵衛だった」 という人だ。 祖母の梅酒の大ファンで、はじめは、出来上がった梅酒を貰いに来るだけだったのが、いつのころからか、自分でも作りたい、と言って、祖母の梅仕事を手伝いに来るようになった。 藤田さんは、下宿時代の思い出話をしてくれたり、自分で家で作ってみて失敗した梅酒の話を面白おかしく話してくれるので、わたしは大好きだった。 梅仕事の後は、3人で食卓を囲み、藤田さんは、 「懐かしい!」 を連発して、もりもりと食事をたいらげ、祖母の梅酒の瓶を一つ、大事そうに抱えて帰るのだった。
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