時間の色に染まる

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「こんなにきれいな色の梅酒が作れるようになるまで、僕はあと何年かかりますかねぇ。」 週末、梅仕事の後の夕食の席で、祖母の梅酒の入ったグラスを光にかざして眺めながら、藤田さんがぽつりと言った。 祖母は、返答するでもなく、 「この子にね、梅は緑色なのに、この琥珀色はどこから出てくるの?って聞かれたことがあって。  確かに不思議だなあって、あれから毎年、梅仕事をするたびに思い出すんですよ。」 私は、祖母がそんな小さな疑問を覚えてくれていたことに少し驚いた。 「琴子ちゃんは、面白いことを考えるねぇ。  僕はおばあさんの梅酒の一番弟子を目指していたけど、やっぱり琴子ちゃんにはかなわないなぁ。」 いい具合にアルコールが回っていたらしい藤田さんが大げさに驚いているのをちょっと放っておいて、私は、祖母に言った。 「この前、博物館で、琥珀を見てきたでしょ?  あの時どうして、梅酒と琥珀は全然違うものなのに同じ色になるんだろう、って思ったんだけど、もしかしたら時間の色に染まってるんじゃないかなあ。 きっと、時間の色がああいう琥珀色なんだと思ったんだ。  ほら、仏壇に飾ってある古い賞状も、端っこの方が琥珀色に染まってきてるし。」 ほんのり頬を赤くした藤田さんは、ほう、とため息みたいな声を出してから、 「時間の色に染まって琥珀色か。それはいいね。ロマンを感じるねぇ。」 と、一人、さらに盛り上がっていった。
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