恋のクロマトグラフィー

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 ついに完成したーーぁ!  時刻はもう21時を回って、今は私一人しかいない大学の研究室。  物音ひとつ立たない静まり返った研究棟に響きわたる私の歓喜の叫び。  しまった……喜びのあまり思わず叫んでしまった。  だって……  ず―――っと研究していたものが、ついに完成したんですから。 「どうしたの? 大村さん?」  扉を開いて、隣の研究室の湯川君が顔をのぞかせて尋ねてくる。  ……まだいたのね。恥ずかしい。 どうやら私の声を聴いて、様子を見にきたらしい。 「だ、大丈夫、なんでもないから」 「そう? 今日もこんな時間まで実験?」 「ま、まあね」 「もうこんな時間だけど、今日もまだ残っていくの?」 「うん。もう少ししたら、帰るから」 「そう? じゃあ、僕はもう帰るけど、気をつけてね」 「ありがと。また明日ね」  湯川君も毎日この時間まで残って研究している、私と同期の熱心な大学院生だ。  真面目で優しくて、控えめな大人しい人。  きっと彼も私と一緒で、とても大事な研究に勤しんでいるに違いない。  それにしても……  やったわ!!  ついに研究していたものが完成した!  嬉しくて嬉しくて、思わず顔がにやけてしまう。  その私の念願だった、取り組んでいた研究内容というものが……  名付けて、 『サイコクロマトグラフィー』  サイコのクロマトグラフィー。  まずクロマトグラフィーとは……  簡単に言えば、  香水とかインクは、一つの成分ではなく幾つもの種類が混ざり合って形成されている物で、それをひとつずつ検出して分析することである。  紙に垂らしたインクなどを水に濡らすと滲んでいくのだが、溶ける速度が違うので滲む過程で色が分解され、青いインクだったものが緑色が分離して現れたり、赤い色が滲んだりしてくるのだ。  そして今回私が発明したものは、その原理を応用したもの……  なんと!  人の心理を読み解くもの!!
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