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3.迷わない
俺たち3人は、夢を叶えた。
3人揃ってワールドカップの舞台に立っている。ケイちゃんの言う通り、俺だけが違うユニフォームになったけれど、それでも夢は叶ったのだ。
「タケオ、悪いけど今日、ゴール決めるぞ」
「やれるもんなら、やってみやがれ!」
そう言って俺とタケオは拳を合わせた。その光景を捉えていた場内カメラが巨大スクリーンにそれを映し出すと、青一色のスタンドからは、歓声ともどよめきともとれる声が上がった。
日本で生まれたサッカー小僧。日本で育った点取り屋。今は北欧に住む外国人のサッカー選手・檜山朝陽。母国はここ日本のスウェーデン人。
小さい頃から憧れて、応援していたサムライ・ブルー。今日このスタジアムを青く染めるその憧れのユニフォーム。だけど青く染まった母国代表のスタンドは今日、俺を応援することはない。
青く染まったスタンドは、今日の俺には敵なのだ。
だけど後悔はしていない。そうまでしてでも立ちたかった夢舞台。
今日ここで母国を倒すゴールを決めたとしても、俺は迷わない。
父さん、母さん、兄ちゃん。日本を応援してくれていいよ。俺は自分で選んでここにいる。だから母国を応援してくれ。
それに俺にだってスウェーデンに仲間がいる。俺はひとりじゃない。
日本生まれのスウェーデン人、今日は最高のプレーを見せてやるんだ。
――おわり――
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