花を弔う

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「本当にいいの?」 「一緒に外に向かいましょう」  その日、トピアリーにとって世界の全ては変化した。  パルテールがトピアリーを外に連れ出すことに決めたからだ。  これまでと異なり、トピアリーはパルテールの態度が妙に恭しいのに違和感を持った。けれどもそれより地上に向かう階段が気になった。一歩登るごとに地上から差し込む光に世界の明度は上がっていく。あまりの眩しさにトピアリーは思わず目を瞬かせる。  その先の扉を開けたトピアリーは目を見張った。明るさと太陽、大気と風、そして温度というものを知った。何より驚いたのは、世界が様々な色の花で満ちていたことだ。  思わずその色鮮やかさに目を瞠り、振り返る。そこには一本の巨木が聳え立ち、自身が出てきたウロがその奥に続いていた。 「トピアリー、いえ、王よ」 「王?」 「私は全の木です」 「パルテール?」  風が吹き渡る。 「私は遥か昔に失われたこの国の全ての人間のDNAを保存しています。まずは王であるあなたを復元しました」  トピアリーは混乱した。何故ならそんな話は始めて聞いたし、全の木の話はただの物語だと思っていたからだ。 「やがて他の国民も目覚めるでしょう。そうしてあなたがこの国の人々を導くのです」  トピアリーは眉を顰める。 「そんなことを言われても、僕にはどうしていいのかわからない」  周りの花のうち、紫の花が揺れた。パルテールはニコリと微笑む。 「大丈夫です。たくさん話し合いました。この世界は無謬の木さえ植えれば、他にはなにもいりません。この世界は満ち足りています。あなたはありとあらゆる色の花を咲かせることができた」  パルテールはその腕をすべての色に染まった世界に向けて伸ばす。  どこまでも広がり入り交じる様々な色の花々。 「あなたのこれまで育てた多種の花をこの世界に植えました。、たくさんの花の咲き続ける世界を」 Fin
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加