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残された男性陣がどよめく。
「何でヤツなんだ。あんな坊っちゃん、どう考えても合わないよ。」
「いちばん釣り合うのは俺だろう。」
口々に不満をぶちまけながら、“納得いかない”といった表情で、彩佳が先ほど口にしていたアトラクション小屋まで足を運ぶと、その出口で彼女が出てくるのを待った。しかし、所要時間が15分くらいであるにもかかわらず、20分たっても30分たっても、いっこうに出てくる気配はない。実は、午前中からの“事の経緯”を見ていた辰也が機転を利かせていたのだ。
「もしかしたら、みなさん揃って出口付近で待ってるかもしれませんよ。ここは、あとにしませんか?」
そんなこととは知る由もない5人は、なおも待ち続けたが、40分たったところで“ここに入っていなかったんだ”と感付き、ようやく動き始めた。
そのあとの彼らにとって、ここは“夢の国”ではなかった。“合コン”の場でもなかった。迫力のあるアトラクションも、他の女性参加者も目に入ることはなく、ただただ、彩佳の姿を求めてパーク内を駆け巡り続けた。それはまるで、どこに置いてきたのか、皆目検討のつかない忘れ物を探すような光景であった。
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