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やがて時刻は正午を回る。11人という、まとまった人数であり、座席を予約していた都合上、同じ時間に同じ場所で昼食を摂るスケジュールになっていた。一行は指定されたレストランに入ったが、さすがに全員がひとつの円卓テーブルに座ることは難しい。5人と6人に分かれたふたつのテーブルが用意されていた。男性陣が早々に席に着こうとしている中、女性陣はそろって化粧室に入っていった。文字通り“化粧直し”のためである。
男性陣の狙いは、当然ながら、彩佳を自分の隣の席に招き入れることだ。まずは自分の隣は空席にしなければならない。とはいえ、皆が同じ思惑であるから、6人テーブルは、必然的にひとりおきに席が埋まっていく。一方の5人テーブルもふたりが同じように腰を降ろしたが、最後に席に着こうとした最年少の辰也がどこに座ってもそこだけ男性が並ぶことになる。先に座っているふたりは執拗に辰也が自分の隣に来ることを拒んだ。席に座れない辰也があたりをうろうろしていると、化粧室から戻ってきた女性陣が徐々に集まってきた。すると、席に座らずに困ったような表情をしている辰也に気がついたひとりの女性が声を掛けてきた。
「どうされたんですか?」
「あっ、いや、みなさん、隣には女性に座ってもらいたいようで、僕が座ろうとすると“向こうへ”って言われちゃうんです。」
苦笑いしながら辰也に答える。
すると、すぐ隣でそれを聞いていた彩佳が、唐突に辰也の腕をとると、ふた席空いているうちのひとつに彼をエスコートして、そして自身もその隣の席に座った。
彩佳の反対どなりに座っていた男性は、彼女が隣に来たことで、大いにテンションが上がった。さっそく話しかけようと、彩佳の方を向いた瞬間、彼女は、それを避けるように、等間隔に置かれていた椅子を、辰也のいる側に大きくずらし、そして、辰也に向かって話しかけてきた。
彩佳はどちらかというと、大人っぽい落ち着いた雰囲気があり、同世代の男性がどうしても幼く見えてしまうきらいがあった。元来、年上相手の包容力を求めるタイプの彼女にはいささか“頼りない”といった感情を抱いてしまうのだ。今日も、“合コン”であるのだから、いろいろな参加者と会話をするなど時間を共にして、その人のひとどなりに触れようとするのが本来の姿だと思うが、自分の気を引くことだけに躍起になっている彼らがものすごく子供っぽく見えてしまい、とてもとても、恋愛対象として捉えることが出来なかった。
その一方で、唯一自分より年下で、自分に強い関心を示さない辰也が逆に気になり始めていた。年の差は3つである。なるほど、相手が年下ならば、そもそも幼く見えて当たり前だ。根本的な認識を変えてみたら、新しい景色が見えるかもしれない。自分が包容力を示すのもありかと考えたのだ。
食事中、彩佳は、辰也の人柄を知るべく、反対どなりの男性には見向きもせず、常に辰也の方向を見ながら会話を弾ませていた。
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