鬼神勇人

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「ここが、噂の、空き部屋」  青空が広がる正午。風が吹く度、ギシギシと音を鳴らしながら建っている旧校舎の廊下に、一人の女子生徒が不安そうに眉を下げ立っていた。  彼女の目の前にあるドアの上には、教室の名前が書かれているプレート。でも、掠れすぎており読む事が出来ない。  息を飲み、緊張の面持ちで、女子生徒はドアに手を添える。その時に動きを止めた彼女だが、目を強く閉じたかと思うと眉を吊り上げ、勢いよく大きな音を出しドアを横にスライドし開けた。  ”バン”という音が教室内に響き、彼女は中を見回す。  中は黒いカーテンで陽光を遮られ、微かな光しか入り込んでいない。  机や椅子などが散乱しており、薄気味悪い。電気は壊れているらしく、彼女が電気を手探りで探しだし、カチカチと押しても意味はなかった。 「あ、あのぉ」  中に人がいるかわからないが、なんとなく声をかけてみる。返ってきたのは女性の声から数秒後、気だるげな声だった。 『なんの用かな…………っ!?』 「え、あ…………」  暗闇で黒い服を身にまとっていたからか、彼女はすぐに声の主を見つける事が出来ず、声のした方をきょろきょろと見る。 『こっち、こっちだよ』 「え、ど、どこですか?」  声は聞こえるのに、姿は見えない。その事に恐怖を感じ、彼女の身体は震え始め、後ずさる。一人で来た事に後悔し、彼女は限界というように振り返りドアから逃げだそうと手を伸ばした。  ――――その瞬間  ”バン”という音と共に、ドアは閉じられ逃げ道を失った。目を見開き、どうする事も出来ない彼女の後ろに突如として現れた人影。  両手を左右に大きく広げ、彼女に背中から抱き着くように姿を現したのは、口角が上がり、フードの隙間から黒髪をひらひらと揺らしている青年だった。  ――――――――ガバッ 「ひっ!?!?」 「君、もしかして霊感あるかい? 幽霊が見えるかい? 君みたいな可愛くて霊感のある人を探していたよ!!」
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