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プロローグ
ピンク色のふりふりワンピース。白いレースのエプロン。
リボンのついたニーハイソックス。キャンディモチーフのペンダント。
背中まであるストレートの髪は下ろして、カチューシャで飾った。
その格好で帰宅した夫を玄関で出迎えると、彼は持っていたバッグをその場にドサッと落とした。
いつもは理性の塊みたいな涼しい顔がデフォルトの夫が、高揚を隠し切れない眼差しを向けてくる。
恥ずかしい反面どこかうれしくもあり、体が熱くなってくる。
メイドの姿なんて、もう二度としないと思っていたのに……。
「最高だよ、ゆまりん」
「くもっち……」
立ち尽くして、見つめ合う。
私、伊波由真と夫の伊波八雲がこうして
「ゆまりん」
「くもっち」
と呼び合うようになるまで、私たちは秘密だらけの夫婦だった。
一番そばにいたのに、彼のことをなにも知らなくて。
彼もまた、私の本当の姿を知らなかったからーー。
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