忘れていたもの

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「ごめんね、急に来て。母さんにも言ってないんだ」 「そうかい。とりあえず、疲れただろ。お茶出すから座ってな」 ばあちゃんがお茶を入れてくれて、久しぶりに帰ったので世間話をしていた。 最近の学校のこと、優のこと、俺自身のこと。 話をしていると盛り上がり、色んな事をばあちゃんに話をしていた。 「そういえば」と言い、ばあちゃんがタンスをごそごそとし始めた。 「これこれ。あんた、私らの家に忘れてただろ?」 手渡してくれたのは、ずっと探していたじいちゃんの手紙だった。 「これ...ここにあったんだ」 「あんた、来る度にずっとじいちゃんの手紙を持ってただろ。真翔が寝てしまって車にそのまま乗せられて帰った時に忘れたんだろうな。あんたが忙しくてこっち全然こんかっただろ?けど、真翔が来た時に渡そうと思ってずっと取っておいたんだよ」 「そうか...」と目を少しうるっとさせて笑った。 「なぁ、ばあちゃん。じいちゃんのお墓に一緒に行ってくれない?久しぶりにじいちゃんと喋りたくなった」 「いいよ。じゃあ、花屋さん寄って一緒に行こうかね」と優しく真翔に微笑みかけた。 お墓に着き、俺とばあちゃんは墓を一緒に掃除をし、綺麗な花を挿した。 手を合わせて、俺は今の現状とずっと来れていなかったことを謝った。 「(じいちゃん、ごめん。ずっと来れてなくて。最近もさ、優と遊んでるんだぜ。さっきまで優と作文の宿題してたんだ。それで、宿題で思い出した手紙を取りに来たんだ。つっても、無くしたって思ってたんだけどな。じいちゃん、また色んな話しにくるわ。じゃあな)」 じいちゃんのお参りを終え、帰宅した。 「今日は、ばあちゃんありがとう。また、来るわ。今日のことは母さんに黙っててくれ」 「わかったよ。きーつけて帰んなさい。また、ゆっくりきーねぇ」 「わかった。ばあちゃんも体に気をつけてな。じゃあ」 ばあちゃんが手を振っていたので、手を振り返しニコっと笑った。 「真翔」と後ろからじいちゃんの声が聞こえた気がした。 振り返ってもばあちゃんの姿しか見えなかったが、クスっと笑い真っすぐ歩いて行った。 「忘れ物、ちゃんと取りに来たぜ。じいちゃん」 手紙を空にあげ、歯を見せて笑った。
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