恋の神様がくれた飴

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距離を詰められるたび 胸がドキドキして呼吸まで乱してくる そんな初心者の自分に呆れていると 土居の長い指が顎を持ち上げ 視線が絡んだ瞬間、唇が重なった 戸惑っているうちに 口付けは深くなり 始めてのそれに 更に心拍数が上がる 「・・・ぁ、んっ・・・」 絡む舌から伝わる熱に 溺れた身体から力が抜けた 「・・・・・・ん」 リップ音を鳴らして終わったそれは 土居の支えがなければ足元に崩れ落ちていたに違いなくて 始めてのことばかりに揺れる思いを見透かすように 「僕のこと。ゆっくりで良いですから好きになってください」 土居は甘く甘く囁いた 頷くだけで精一杯の私の手を引いて 部屋に戻った土居は買い物袋からクッションを取り出すとタグを切り取って「どうぞ」と床に置いた 「えりさん」 「ん?」 「勇人(ゆうと)って呼んで下さい」 「うん」 「呼んで」 「ゆ、うと?」 疑問系になるのは照れ隠しだから この際許して欲しい でも、たったそれだけなのに 顔を綻ばせた土居は 「えりさん大好きだ」 今日一番の笑顔を見せてくれた その顔が近付いた途端、唇が重なり 性急に深くなる口付けに夢中になった いつの間にか固い床に背中を着けていて 胸元のボタンに伸びた土居の手を 咄嗟に掴んでしまった 「・・・・・・ぁ」 目蓋を開いた途端、目に飛び込んできたのは眉を下げた土居の顔 「ダメ・・・ですよね」 そのシュンとした瞳を見ているだけで 胸が更に苦しいから 「明る、いと、恥ずかしい」 「・・・っ、ごめんなさい それに、痛かったですよね」 此処がフローリングの床の上だったことに 今更ながら気付いた土居に身体を起こされた フワリと抱きしめられた後は 「・・・ヒャッ」 軽々と抱き上げられた 「あ、あ、の」 間近に見える土居の目は ゆらり燃えるように熱を帯びていて その目に躊躇う気持ちが消えた 見たかったのに開けられなかった扉の中は 机とベッドだけの、とても綺麗でシンプルな部屋だった ベッドに下ろされた途端に 「シャワーを、」 口にしたそれは 土居の「必要ないよ」唇の中で消えた キスに翻弄される間に露わになる肌 「えりさん綺麗だ」 恥ずかしくて身体を隠すように胸元に置いた手はシーツに縫い留められた 「色が白いのは知ってたけど」 「やだ。あんまり見ないで・・・」 恥ずかしさに目が開けられない そんな私に 「もしかして、えりさん初めてですか?」 片方の手が離されて、フワリと頭を撫でられた 「・・・」 固く閉じていた目蓋をそっと開ける 土居の目は真っ直ぐ私を射抜いていた 「こんなに恥ずかしがって キスしても震えてて」 「・・・」 「嬉しいです」 一度オデコに口付けた土居は 「えりさん、大好き」 そう言って唇を合わせた
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