恋の神様がくれた飴

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♪〜 微かに聞こえる着信音に土居は寝室を裸で出て行き 「・・・あぁ、なに。えっ こっちに来てるのか あぁ今、彼女と居るから・・・」 渋い返事をしながら戻ってきた 「えりさん。あの・・・」 電話の相手は土居のお母さんだったという 「親父とデパートに買い物に出て来たらしくて」 ついでに渡したいものがあるそうだ 「ご両親が来るなら。帰るね」 たまにしか帰省しないと聞いたから 気を利かせたつもりだったのに 「一緒に居て下さい 両親に紹介したいんです。だめですか?」 真っ直ぐな目で訴えられては断る理由がなくなって 着替えて待つことになった 彼の両親は車で一時間程の山間に住んでいる 代々専業農家で米や野菜を作っているという 彼のお兄さんは去年結婚して農家を継ぐために同居もしていると聞いたことがある ご両親が来る度、頂くお裾分けの野菜はNEXTOPで大人気だ 三十分経った頃、大きな段ボールを抱えたご両親が到着した 「初めまして」 挨拶を済ませると小さなテーブルを四人で囲んだ 「彼女さんは何をしてる方なの?」 土居のお母さんの興味は私らしい 目尻の皺の深い日に焼けた肌が働き者の証 「・・・勇人さんと同じ会社です」 「不動産屋さんなのね」 「はい」 うんうんと頷いたお母さんに 「お袋、覚えてないのか こちらは社長のお嬢さん」 土居は空気を読まずにバラした 「「・・・えっ」」 途端に背筋を伸ばしたご両親は 気付かなかったことを詫びて何度も頭を下げた 私も同じように頭を下げていると 土居は舌を出して笑っていて 憎めない態度に最後は笑ってしまった 「余り長居しちゃ、若い二人の邪魔になるから」 気を利かせてくれたご両親は 丁寧に挨拶すると帰って行った 残された段ボールを開けると 土の匂いがする野菜が沢山詰まっていた 「素敵なご両親ね」 「田舎もんですよ」 「バチ当たりね」 「えりさん持って帰りますか? 僕はこんなに食べられないし」 土居は土のついたジャガイモを手に持った 「ちゃんと根菜も食べないと長生き出来ないよ」 こんな時はお姉さんになる 「じゃあ。えりさんが作って下さい」 「・・・そうね」 お強請りの可愛い目を見ただけで頷いてしまった
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