恋の神様がくれた飴

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ーーーーー週明け 「おはようございま~す」 繁忙期以外は毎月日曜日が休日になる そんな休み明けの月曜日の朝は 従業員はパソコンにかじりつくところから仕事が始まる お茶出しは各自になっているのに 私のデスクにコーヒーを置いた土居は 「おはようございます、えりさん」 可愛い顔を綻ばせた 「・・・おはよう」 出来るだけいつもと変わらず接しようと決めたのに一瞬で顔が熱い それを俯いてなんとかやり過ごしていると 父が最後に入って来た 「おはよう」 「「「「おはようございます」」」」 全員勢揃いしたところで 父は私のデスクまでやって来た 「えり。朝礼済んだら部屋においで」 それだけ言うと社長室に戻って行った ・・・なんだろう 昨日も帰ったのは遅くて 今朝はバタバタして父と話していない 上の空の朝礼が終わると父の前に立った 「えり、土居との付き合いは えりの中で結婚まで進める付き合いか?」 いきなりの直球に息を飲む こういう真っ直ぐなところは みよが受け継いだんだと思った 「まだ始まったばかりで、なんとも言えないけど 私はそうなると嬉しいと思ってる」 どれだけ想っていても元カレの時のように養子を嫌って振られることもある 「えり・・・父さんな」 「・・・ん?」 「養子のことでえりが辛い思いをしてるなら、父さんでこの店を閉めてもいいと思ってる だからもしも土居が養子が無理だと言うのなら嫁に行って良いからな」 「・・・っ」 「昨日母さんとも話し合ったから えりに知らせておこうと思ってな」 「父さん」 ・・・狡い 元カレと別れたことも みよが後継ぎにならないことも 全部周りの所為にしたのに こんなことって・・・ 抑えきれない感情が溢れ出してきて 始めて声を上げて泣いた 「おいおい朝から泣くなよ えりもまだまだ子供だなぁ」 父はそっと頭を撫でてくれる いつも変わらず優しい父を みよに取られたと拗ねて距離を置いたのは自分 みよみたいに素直に甘えられなくて 両親はみよだけが可愛いんだって 捻くれていたのも自分 みよが生まれるまで 八年間両親を独り占めしたことも 忘れるほど妬いていた 祖父から受け継いだ会社を父の代で 桁違いに大きくしたことを知っている だからこそ、この会社を閉める訳にはいかない 「父さんありがとう」 「あぁ」 「でも大丈夫 この会社は私が継ぐって決めてるから」 涙を拭う私にティシュの箱を持たせた父は 「えりは母さんに似てるから 泣いてると父さんも苦しい」 そう言ってもう一度頭を撫でてくれた 「・・・」 母は今も変わらず父に愛されてる あの浮気疑惑は間違い 母に宣言したい気分だった
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