恋の神様がくれた飴

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落ち着いたところで 父の仕事の予定を聞いていると 扉がノックされた 「社長」 聞こえてきたのは土居の声で 「はい」と扉を開けると土居が渋い顔をして立っていた 「どうかした?」 問いかけると同時に土居が少し身体を捻ると、後ろに土居のご両親が立っていた 「・・・おはよう、ごさいます」 「どうした、えり」 「あ、の、社長。土居のご両親が」 振り返ると驚いた父が立ち上がり 応接セットへと促した 「朝早くから失礼いたします」 土居のお父さんが挨拶をして 向かい合って座ると 「うちの息子がお嬢さんとお付き合いをしてると昨日聞きまして ご挨拶が遅れて申し訳ありません」 汗を拭いながら話し続けるお父さん 隣でお父さんの話の補足をしながら 頭を下げるお母さん その脇で頭を掻きながら苦笑いの土居 チラッと父を見ると 笑いながら話を聞いている 土居のお父さんの話が終わると父が土居に 「土居は先のことをどう考えている?」 核心に触れる質問をした 「僕はえりさんと結婚を前提としたお付き合いをさせて頂いています」 事前に準備していたかのような模範回答に吹き出しそうになるけれど 社会人一年目の土居がそこまで考えていてくれたことが嬉しい 「・・・そうか。うちは娘しかいないから 養子にくる心づもりがあるかどうか・・・」 話しが終わらないうちに 「うちは長男が結婚して同居しています 農業も継いでくれていますから勇人は養子にだせます」 土居のお父さんが割って入った 「そうですか」 安堵の表情を浮かべる父 「はい。いつでももらってください」 笑顔のお母さん 「土居はどうだ?うちに養子にきてもいいのか」 「はい」 土居は真っ直ぐ父を見て頷いた 。 土居のご両親の突然の訪問以来 会社の従業員にもバレたことで 私達の付き合いは公認となった 公私混同はしないという彼の宣言通り 仕事中は私の部下で終わるとリードされる 私は・・・ 仕事場では“土居”と呼び 店を出ると“勇人”になる 土居の部屋で手料理を振る舞い、泊まることも度々 もう二十六歳だからと両親も笑顔で送り出してくれる 「えりさん、今夜は何食べますか」 近くのミニスーパーに手をつないで買い物へ行き二人でカートを押す 小さな初めてをいくつも積み重ね 心の中は土居で溢れていた 部屋のキッチンは少しずつアイテムが増えて使い勝手が良くなった 毎回並んでキッチンに立ち 食べ終わると片付けも一緒 母からのレシピも頭の中に入り レパートリーが増える度 美味しい美味しいと喜んでくれる 些細なことってこんなにも幸せ 「えりさん、聞いてますか?」 お皿を拭きながら肘で突かれて我に返った
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