恋の神様がくれた飴

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突然のプロポーズの後は二人でプランを立てた 結婚は駅前開発ビルのオープンと業界の繁忙期を過ぎた六月 それまでは恋人としての時間を大切にしたい 「えりさん」 「・・・ん?」 「結婚したら。仕事を辞めますか?」 「勇人はどうしてほしい?」 「僕は、一緒に働きたい気持ちと 家に居て欲しい気持ちと半々です」 「子供が出来るまでは働きたいな この仕事好きなんだよね」 働きたいのは素直な気持ちだけど 年齢を考えれば、早く子供が欲しい思いのほうが強い だからこそ迷う 「じゃあ、えりさんの案に乗ります」 ・・・子供ができるまで 子供が私達の間にきてくれることを願って土居の胸に耳を寄せると、頭の天辺でリップ音がした 半月前までは想像もつかなかった心地良い温もりに ふと、思いが巡る 「ねぇ・・・なんで勇人はさん付けなの?」 「あ〜、そうですね」 「それに敬語だって」 「ん・・・確かに」 いつも“えり”って呼ばれたい ひとまず理由を聞いたのは 彼の気持ちを確かめたいだけ・・・ こういうところは変えられないな 「緊張するんです」 「緊張?」 「本当は付き合ってもらえるなんて思っていなかったから・・・」 好きになって貰うってむず痒い 嬉しくて口元が緩むほど私を甘やかせる 「えりさんに釣り合う格好いい男になりますから それまで、えりさんとえりと混ぜても許して下さい」 真面目に答える土居が可愛くて フッと声に出して笑ってしまった 「え、笑った?もぉ怒った」 他愛もないことで戯れる 憧れても出来なかったそれ 遅めに手に入れたものは いつも私を笑顔にしてくれる宝石箱のような彼氏 「ほらまた。えりさんの世界に入ってたでしょ」 直ぐに妄想の中に入る私を途中で止めた土居は 「余所見は厳禁」 そう言って唇を重ねた
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