恋の神様がくれた飴

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「お前さ、付き合っていた時には他の男と遊んでばかりだったのに、俺に彼女が出来るとなんで邪魔するんだよ」 土居の怒ったところを初めて見たことに驚く間も無く さっきまでのクネクネした元カノは 斜に構えて彼を睨み付けていた 「な~によ良いじゃん結婚した訳じゃないんだし それに彼女さんって何歳なの?先輩より年上でしょ?」 唖然としているうちに周りの友達が二人の間に割って入ったけれど 土居の怒りは収まらないようで 「俺のことは構わないけど えりを悪く言うと許さないからな お前が後をつけてたの俺が知らないとでも思ってんのか」 分からないけれど、知らない内になにか起こっていることは確かで その事実に身体が震え始めた 「・・・勇人、もう、止めて」 精一杯搾り出した声に気付いた土居は 振り返ると「えり帰ろう」 手を引いて土手を上がった 車に乗り込むと一瞬で眉を下げた土居は 「えりごめん 嫌な思いをさせちゃって」 頭を下げた 元カノとの間に何があったのか 想像も出来ないけれど 元カノのこと“お前”って言ってた 自分のこと“俺”って言ってた 後をつけたとか・・・ 冷静になって思い出すと 元カノは彼のことがまだ好きにも思えてきた 土居より年下でクネクネした可愛い子 頭で考えようとしてみても 恋愛経験のない私には 導き出す答えも見つからなかった 「えりさん。ごめん」 また“えりさん”に戻ってしまった 「大丈夫だよ。あの子の言った年の差のことも本当だし」 慰めるつもりの言葉が自分自身を追い込む 「ごめん」 何度も謝られるとこっちが辛くなる 「勇人ごめん。今日は帰るね」 ラブシーンを見せられるより ダメージが大きく思えた 「えりさん待って下さい あいつとは本当に何にもないんです 大学を卒業して今日久々会ったんです えりさんの前で嫌なところを見せてしまって悪かったと思ってます ごめんなさい。だから帰るなんて言わないで・・・」 潤んだ瞳が悲しげに揺れた 私に過去があるように 土居にも過去がある 受け止められないのは 埋めることの出来ない年の差と嫉妬心 付き合いの浅い私達二人の微妙な距離感 「えりさん。送りますね」 会話もないまま家に着くと 黙って車を降りた 。 一人寂しく膝を抱えてみる けれど 導き出す答えは見つからない こんなことなら一緒に居れば良かったと後悔が生まれた 泣きそうな顔をしていたから ひとりで大丈夫かな・・・ 帰るって言ったのは自分なのに 会いたくて泣きそうになる 握り締めたままの携帯電話が震えた [えりさんごめんなさい えりさんを傷付けてごめんなさい] 届いたメッセージは謝罪の言葉だった ・・・・・・ほら 落ち込んでいる土居を、慰めてあげたいって思うのは年上だから? そんなこと どうでもいい 会いたいんだもの 右手の人差し指が迷いを消して 名前をタップする (もしもしえりさんっ どうしましたかっ) 焦った土居の声が聞こえただけで なんだかホッとした 「勇人が泣いてるんじゃないかと思ったの」 (はい・・・泣いてます) 震える声を聞くだけで締め付けられる胸 「・・・会いたい」 (はいっ、すぐ迎えに行きます) 二人のことは二人で解決する これから二人の歴史を作るために・・・
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