恋の神様がくれた飴

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レガーメの最終抽選会と懇親会の日 開始三時間前には沢山の資料と共に父と会場のホテルに入っていた 三階の広いホールに立った父は 「ここは披露宴会場で使う広さだな」 ポツリと溢してぐるりと見回した 「そうだね」 ここのホテルはキレイでアクセスも良い 六月の結婚式を思い浮かべたところで 「えり、控え室こっち」 既にホールから出ていた父の呼び掛けに現実に戻った 「みよは今日来ないから 悪いが最後まで一人で頑張れ」 名簿と名札に、懇親会の会費用の手提げ金庫を渡された 開始三十分前には受付に座る 接客が得意ではない私にとっては 苦痛でしかない受付の仕事 みよが居てくれたら良いのに、なんて思ってはみても 青野さんと別れたから、しばらくは来ない予感しかしない 人が集まり始めると忙しさにそんなことすら忘れていた 「お願いします」 低い声が聞こえて顔を上げると、みよの元カレの青野さんが立っていた 「こんにちは こちらにお名前と・・・」 ひと通りの説明をして名札を渡す 真っ直ぐ見つめられて挨拶されただけなのに この人の持つ雰囲気は独特だ 雰囲気に飲まれる前に視線を外そうとすれば 「あの・・・」 青野さんは何か言いたげに口を開いた 「・・・え」 「あ、ごめんなさい」 「・・・いえ」 「みよは、元気にしてますか」 みよのこと以外で声をかけてくるはずもないのに構えてしまった 「・・・元気にしていますよ あの子わがままだったでしょう」 「いや・・・わがままなんて 可愛いものでしたよ、今となっては もっとわがままを聞いていたかった」 少し悲しげに歪む顔も 色気を孕み過ぎて目の毒だ この人でも適わないとは 流石のみよだ 「・・・すみません」 私が謝ることでもないのに 頭を下げると、同じように頭を下げた青野さんは お供を連れて会場へと入って行った
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