恋の神様がくれた飴

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結局、車を走らせて着いた店はファミレスだった 「ここファミレスですけど」 ケラケラ笑いながら車を降りる土居 「土居がファミレスって言ったでしょ 早く帰りたいから早く出てくるファミレス」 嫌味を言ったつもりの私に 「この店のドリンクバーのチケット持ってるから 朝まで一緒に居られますね」 土居はニッコリと微笑んだ 「・・・っ」 言い返そうとした言葉は飲み込んだ 何を言っても負けるなら黙っておく そんな小さな決心も固い鎧も 土居の笑顔で簡単に破られたあとは お喋りに夢中になった所為で 気が付くと時計の針が天辺で重なっていた 「ヤバい怒られちゃう」 ポロっと出た声を拾った土居は 「僕、一緒に怒られますね」 神妙な顔をする 「馬鹿じゃない?」 そう言いながらも 元カレが家に来ることは 一度もなかったと胸が苦しくなった ♪〜 鳴り始めた深夜の携帯電話に 驚いて画面を見ると母からだった 「もしもし」 (えり。大丈夫?) 「母さんごめん。まだファミレスなんだ」 (帰らないの?友達?) 「そう」咄嗟についた初めての嘘 (お友達と一緒なら大丈夫ね 母さん寝るわね。おやすみ) 「うん、おやすみ」 そっと終話ボタンを押す 「えりさんごめんなさい。帰りますか?」 眉を下げた土居の気持ちも分かるけれど 「明日は休みだから、もう少しだけなら」 二人の時間を引き伸ばそうとする自分に気付いた 「えりさんが良いのなら僕は嬉しいです」 気持ちをストレートにぶつけてくる土居を可愛いと思った そして 素直になれず、言われた言葉に裏がないか 疑心暗鬼になる自分を恨めしくも思った 四歳の差はこういうことなの? それとも単に私が疑いすぎ? 話し掛ける土居を放置で 自分の世界に入っていた私を 「えりさん。うちに来ませんか?」 土居さ現実に引き戻した 「・・・え、土居の家?」 「はい。1LDKのマンションですけど・・・」 「知ってるわよ家のマンションなんだから しかも私の名前付きなのよ?EYは」 クッと喉を鳴らして笑う土居は 「怖いんでしょ?僕に食べられるんじゃないかって」 悪魔のような笑みを浮かべていた 「そ、んな訳ないじゃない!」 努めて平静を装ってみたものの 早い展開に手が汗ばんでくる さっと伝票を取った土居は 「ここは僕が・・・」 スマートに精算してしまった 「私がご馳走するはずだったのに・・」 俯き加減で言うと 「男は。好きな人の前では見栄を張りたいものなんですよ」 ニッコリ笑顔つきでエスコートされる 腰に回された手にドキドキしたまま 助手席に押し込まれた
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