はじめての「おはよう」

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はじめての「おはよう」

「むー……ねれない……」  十日間眠りっぱなしだったコウ君の体は、夜になってもちっとも眠りを求めませんでした。  かつてのコウ君がそうしていたように、窓に肘をついてアルディア村の通りを眺めています。あの頃と違うのは時間帯が深夜で、人通りがほぼほぼないこと。  フウ君は隣の寝台で、コウ君のいる方からあえて背中を向けて、呼吸を妨げない最低限だけを残して布団に全身を隠すようにして眠っています。  部屋のどこかから、ぐすぐすと小さく鼻をすする音が聞こえてきて、コウ君はその音の出どころを探すことにしました。  まぁ、他に考え難いですが、その音はフウ君が出しているものでした。眠りながら、寝言と共にぐすぐすと泣いていました。 「ごめん……コウ……ユウにい……。会いたい、よぉ……」  コウ君はフウ君の顔がよく見えるよう、すぐ横に膝をつき。先ほど窓辺でそうしていたのと同じ体勢になります。  ……こういうとき、おとうとがいたらどんなことしてあげるかな。フウ君にはそういう気持ちで接すると、コウ君と約束したから。 「……ねんねこ~、……ねんねこ~……」  赤ちゃんの頃に歌ってあげた、子守唄。何せ赤ちゃんでしたから、うろ覚えだったのでしょう。それでも覚えている範囲で精いっぱいに歌います。フウ君の頭を撫でながら。  その日は眠れないんじゃないかと思っていましたが、フウ君のために動いたことで結果的に体が少し疲れたのか、その体勢のまま寝落ちしていました。
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