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危機一髪でした
最初こそ、おそらく自分が負傷させたことをきっかけに本物のコウ君を失ったことを悔いて落ち込む日々だったフウ君も、いったん割り切って現状を受け入れることにしたみたいです。以前のように、村の友達と遊ぶために外出するようになりました。
コウ君はそんなフウ君にくっついていくわけでなく、いってらっしゃーいと見送ります。以前はコウ君を良く思っていなかったフウ君の友人達も、以前のコウ君よりは少しとっつきやすいことに気が付くと普通に挨拶したり話しかけたりしてくれるようになりました。
同じような年頃の子供達や村の人達と接していくうちに、なおかつ自身のことを「八歳の子供」として周囲の人が扱うのに引きずられたのか、コウ君の内面はみるみる成長していくようでした。
この日もフウ君が出かけるのを見送って、家でひとりぼんやり過ごしていたはずのコウ君でしたが……。
「こぉーーらぁーー! 何してんだぁーっ!」
コウ君の手を引いて連れて行かんとする見知らぬ中年男性の背中に、フウ君がとび蹴りを喰らわせました。間一髪、たまたま家に帰ってきたところだったのです。
「このおじさんについて行ったらお金たくさんくれるっていうから」
「嘘に決まってんだろ! そんなベッタベタのベタな人さらいにホイホイついていくなよっ」
アルディア村は平和な場所ではありますが、観光を主要な産業としている関係上、このような不審者が紛れ込むのも珍しくありません。お祭りに夢中になっているお子様の姿が消えてしまったのも一度や二度では済みません。
今回の不審人物はフウ君が騒ぐ声を聞きつけた近隣の大人に見つかって、駐在所に連行されていきました。
「ってことがあったんだ」
フウ君と別れたコウ君は、暇つぶしにお隣のカイン君を訪ねました。日記帳を持参して、さっそく先ほどの出来事をしたためているようです。「フウが助けてくれたけど、おこられた。知らない人にはついていかないように気を付けないといけない」と。忘れちゃいけないことだからしっかり書いているんですね。
「コウって引きこもり体質だから、そういう手合いの撃退法慣れてなさそうだもんなー」
「引きこもりって何?」
「自分の部屋とか家とかから出てこない人のこと」
「へー、そうなんだ」
「自分のこと言われてるって、わかってますかー?」
こんな感じで頓珍漢な受け答えをするコウ君のことを、カイン君はけっこう気に入ってくれているみたいです。
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